バナナの涙
遥か 様



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男の子のキモチ ハテナ 不思議ね
変・ナ・ノ

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悟浄に誘われて、出掛けて来た、秋の1日。
天気が良くて、暑くもなく、寒くもなく。
絶好のドライブ日和。
悟浄が運転するときかなくて、ジープのご機嫌を取り取り、来ました。
一体、どうした風の吹き回しなんでしょう?
ジープに頼み込んでまで、出掛けたがるなんて。
そんなに、遊びに出掛けたかったんでしょうか?
天気が、良いから? くすくす。
悟空と同じところが、ある人ですからね。
きっと、そうかもしれませんね。
本当は、洗濯をしたかったんですけど。
悟浄のお願いで、お弁当を作ったので、洗濯までは手が回りませんでした。
明日も晴れると良いのですけどね、2日分するので…。
ああ、もうすっかり考え方が、主婦ですね、僕って。
でも、まあ、仕方ないですね。
同居人が、子供みたいなではなく、子供、ですから。
本当に仕方の無い人、ですから。
図体ばかりがでかくて、我が儘で。
これで、同い歳の親友っていうのですから、笑っちゃいますよね、本当に。
だから、つい…。

『こんなに甘え坊だなんて、悟浄の恋人さんは大変ですねえ。』

…って、ポロッと言っちゃったんです。
悪気など、ありませんよ。ええ。
思った事を口にしただけです。
それが。
今までにこにこと機嫌良く、僕の隣に立っていた悟浄が。
くるりと、背中を向けて座り込んじゃったのには、吃驚しました。

一体、どうしたんですか、悟浄?

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今日は天気がいいと、行楽日和には最適だと。
ニュースで言っていたのを聞いて、思い立ったデートだったんだ。
偶には、アウトドアもいーよなって、思って。
八戒に弁当を頼んだんだ。
ジープに、下げたくない頭も下げたさ。
↑コイツ、マジで八戒のゆーコトしか聞かねーんだよなあ。
八戒が、口添えしてくんなかったら、俺、土下座させられてたかも…。
全く、生意気なヤツだ、その内しめて…
と、とっと。
ノーミソなさそーなのに、結構鋭いヤツだから。
今のは、ナシナシ。
臍曲げられたら、折角の努力が水の泡だもんな。

まあ、何とか無事に、俺の運転で気分良くデートに、出掛けたんだ。
どこに行くって、目的地は決めてなく。
アバウトに、海へ行こーってコトにした。
2人だけだしさ(…オマケが一匹いるけどよ)。
気の向いた儘、風の吹くままってのも、楽しーじゃん。
適当に休憩を入れて、途中で八戒の特製弁当を食って。
3時ジャストに、海へと到着。
ちと、渋滞に掴まっちまったけど、まあまあの時間だよな、うん。
夏のシーズン過ぎてっし、もう引き上げの方が多くて。
1時間もすっと、誰もいなくなった。
ジープは、バスケットん中で熟睡中だしぃ。
おおっ、独占じゃん、海も八戒も。
邪魔モンはいねえ、ロケーションもOK。
ここで、一気に停滞中の俺達の関係を進めたっていーよな。
何しろ、ガードが堅くてさ、kissもまだなんだぜ。
やっぱ、ここは俺の甲斐性でと、肩に手を掛けようとしたら…。

『こんなに甘え坊だなんて、悟浄の恋人さんは大変ですねえ。』

……………は?
今、俺の耳、何、聞いた?
もしもし、八戒さん、今、なんつった?
俺の恋人って、お前だろっ!
何、それって…つーコトは。
今まで、俺一人の思い込み?
俺一人の…片思い?

だあーーーーーっ、ウッソだろーーーーーっ。

肩から足から、一気に力が抜けて。
俺はその場に、しゃがみ込んだ。

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「悟浄?」
「八戒、お前さ…。」
「はい?」
「俺のコト、どー思ってんの?」
「えっ?」
「親友なんて、俺はイヤだぜ。」
「は?」
「俺、スキだって言っただろ、お前のコト。」
「ええ、聞きました。」
「んで、お前はって聞いたら、俺のコトをスキだって返してくれたよな。」
「ええ。」
「だったら、ソコで成立だろ? 普通。」
「成立って?」
「俺とお前は、恋人同士ってコトっ!!!」
「そう、だったんですか、僕達って。」

シーーーーーーーーーーンっと。

沈黙が下りて。
波の引き寄せては返す音が、ザザン、ザザーッとBGMと成っている。
真っ白に、触覚までもが綺麗に固まった悟浄と。
言葉のマジックに驚いて、感心している八戒。
余りにも、対照的な2人の間を。
夕方なので、少し冷たさを増した秋の風が。
ヒュルリーと、通り過ぎました。

「悟浄、風邪を引いちゃいますから、そろそろ帰りましょ。」

労りを込めた、優しいお言葉。
声のトーンも、柔らかく耳を打ちます。
けれど、今の悟浄には逆効果。
天の邪鬼、大全開。
一歩だってココを動くもんかの、わんこ状態。

こんなでっかい犬の引き綱を引きずるのは、嫌ですねえと。
困ってしまった飼い主さん…いえいえ、もとい八戒は。
どうしたものかと、暫し考え込んで。
ポンッと、一つの妥協案を思い付きました。

「じゃあ、悟浄。もう一度、最初から始めましょう。
 僕に告白して下さいな。」

ピクッと、悟浄が反応したのを八戒は見逃さず。更に。

「ね、僕、悟浄だったらいいですから。」

ビク、ピクッと、まるで犬耳が見えてるみたいです。

「悟浄。」

まだ、しゃがみ込んではいますが。
顔をあげてきた悟浄の髪を。
八戒の白い指が、優しく掻き上げていきます。

「俺、八戒がスキだ。」
「ええ、僕もあなたが好きですよ、悟浄。」

ゆっくりと、悟浄の額へと寄せられる八戒の唇。
軽く触れた、小さなkissが一つ。
八戒が、花の様ににっこりと笑うので。
悟浄も、つられて笑いました。

「よし、これでホントにマジに、成立だな。
 今更、ナシはナシだからな。」
「ええ、宜しくお願いします、悟浄。」

悟浄が、ガッツポーズで立ち上がる。
勢いの乗って、八戒を抱き締めて、唇にkissしよーとトコロで。

「全く…世話がかかるんですから。
 あんまり、手を焼かせないで下さいね、悟浄。」

今度は、カーンとでっかいスカ音が、響き渡りました。

「さあさあ、帰りますよ、悟浄。
 夕飯は、あなたがおごって下さいね。」

すたすたと、姿勢良く歩いてく八戒の背中を。
悟浄の涙で曇った目で、見えたか見えなかったか…。

そこら辺の真実は、悟浄の名誉の為に。
伏せておいてあげる事に、致しましょう。


2002.11.01 UP

 


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