遥か 様
********** 男の子のキモチ ハテナ 不思議ね 変・ナ・ノ ********** 悟浄に誘われて、出掛けて来た、秋の1日。 天気が良くて、暑くもなく、寒くもなく。 絶好のドライブ日和。 悟浄が運転するときかなくて、ジープのご機嫌を取り取り、来ました。 一体、どうした風の吹き回しなんでしょう? ジープに頼み込んでまで、出掛けたがるなんて。 そんなに、遊びに出掛けたかったんでしょうか? 天気が、良いから? くすくす。 悟空と同じところが、ある人ですからね。 きっと、そうかもしれませんね。 本当は、洗濯をしたかったんですけど。 悟浄のお願いで、お弁当を作ったので、洗濯までは手が回りませんでした。 明日も晴れると良いのですけどね、2日分するので…。 ああ、もうすっかり考え方が、主婦ですね、僕って。 でも、まあ、仕方ないですね。 同居人が、子供みたいなではなく、子供、ですから。 本当に仕方の無い人、ですから。 図体ばかりがでかくて、我が儘で。 これで、同い歳の親友っていうのですから、笑っちゃいますよね、本当に。 だから、つい…。 『こんなに甘え坊だなんて、悟浄の恋人さんは大変ですねえ。』 …って、ポロッと言っちゃったんです。 悪気など、ありませんよ。ええ。 思った事を口にしただけです。 それが。 今までにこにこと機嫌良く、僕の隣に立っていた悟浄が。 くるりと、背中を向けて座り込んじゃったのには、吃驚しました。 一体、どうしたんですか、悟浄? ********** 今日は天気がいいと、行楽日和には最適だと。 ニュースで言っていたのを聞いて、思い立ったデートだったんだ。 偶には、アウトドアもいーよなって、思って。 八戒に弁当を頼んだんだ。 ジープに、下げたくない頭も下げたさ。 ↑コイツ、マジで八戒のゆーコトしか聞かねーんだよなあ。 八戒が、口添えしてくんなかったら、俺、土下座させられてたかも…。 全く、生意気なヤツだ、その内しめて… と、とっと。 ノーミソなさそーなのに、結構鋭いヤツだから。 今のは、ナシナシ。 臍曲げられたら、折角の努力が水の泡だもんな。 まあ、何とか無事に、俺の運転で気分良くデートに、出掛けたんだ。 どこに行くって、目的地は決めてなく。 アバウトに、海へ行こーってコトにした。 2人だけだしさ(…オマケが一匹いるけどよ)。 気の向いた儘、風の吹くままってのも、楽しーじゃん。 適当に休憩を入れて、途中で八戒の特製弁当を食って。 3時ジャストに、海へと到着。 ちと、渋滞に掴まっちまったけど、まあまあの時間だよな、うん。 夏のシーズン過ぎてっし、もう引き上げの方が多くて。 1時間もすっと、誰もいなくなった。 ジープは、バスケットん中で熟睡中だしぃ。 おおっ、独占じゃん、海も八戒も。 邪魔モンはいねえ、ロケーションもOK。 ここで、一気に停滞中の俺達の関係を進めたっていーよな。 何しろ、ガードが堅くてさ、kissもまだなんだぜ。 やっぱ、ここは俺の甲斐性でと、肩に手を掛けようとしたら…。 『こんなに甘え坊だなんて、悟浄の恋人さんは大変ですねえ。』 ……………は? 今、俺の耳、何、聞いた? もしもし、八戒さん、今、なんつった? 俺の恋人って、お前だろっ! 何、それって…つーコトは。 今まで、俺一人の思い込み? 俺一人の…片思い? だあーーーーーっ、ウッソだろーーーーーっ。 肩から足から、一気に力が抜けて。 俺はその場に、しゃがみ込んだ。 ********** 「悟浄?」 「八戒、お前さ…。」 「はい?」 「俺のコト、どー思ってんの?」 「えっ?」 「親友なんて、俺はイヤだぜ。」 「は?」 「俺、スキだって言っただろ、お前のコト。」 「ええ、聞きました。」 「んで、お前はって聞いたら、俺のコトをスキだって返してくれたよな。」 「ええ。」 「だったら、ソコで成立だろ? 普通。」 「成立って?」 「俺とお前は、恋人同士ってコトっ!!!」 「そう、だったんですか、僕達って。」 シーーーーーーーーーーンっと。 沈黙が下りて。 波の引き寄せては返す音が、ザザン、ザザーッとBGMと成っている。 真っ白に、触覚までもが綺麗に固まった悟浄と。 言葉のマジックに驚いて、感心している八戒。 余りにも、対照的な2人の間を。 夕方なので、少し冷たさを増した秋の風が。 ヒュルリーと、通り過ぎました。 「悟浄、風邪を引いちゃいますから、そろそろ帰りましょ。」 労りを込めた、優しいお言葉。 声のトーンも、柔らかく耳を打ちます。 けれど、今の悟浄には逆効果。 天の邪鬼、大全開。 一歩だってココを動くもんかの、わんこ状態。 こんなでっかい犬の引き綱を引きずるのは、嫌ですねえと。 困ってしまった飼い主さん…いえいえ、もとい八戒は。 どうしたものかと、暫し考え込んで。 ポンッと、一つの妥協案を思い付きました。 「じゃあ、悟浄。もう一度、最初から始めましょう。 僕に告白して下さいな。」 ピクッと、悟浄が反応したのを八戒は見逃さず。更に。 「ね、僕、悟浄だったらいいですから。」 ビク、ピクッと、まるで犬耳が見えてるみたいです。 「悟浄。」 まだ、しゃがみ込んではいますが。 顔をあげてきた悟浄の髪を。 八戒の白い指が、優しく掻き上げていきます。 「俺、八戒がスキだ。」 「ええ、僕もあなたが好きですよ、悟浄。」 ゆっくりと、悟浄の額へと寄せられる八戒の唇。 軽く触れた、小さなkissが一つ。 八戒が、花の様ににっこりと笑うので。 悟浄も、つられて笑いました。 「よし、これでホントにマジに、成立だな。 今更、ナシはナシだからな。」 「ええ、宜しくお願いします、悟浄。」 悟浄が、ガッツポーズで立ち上がる。 勢いの乗って、八戒を抱き締めて、唇にkissしよーとトコロで。 「全く…世話がかかるんですから。 あんまり、手を焼かせないで下さいね、悟浄。」 今度は、カーンとでっかいスカ音が、響き渡りました。 「さあさあ、帰りますよ、悟浄。 夕飯は、あなたがおごって下さいね。」 すたすたと、姿勢良く歩いてく八戒の背中を。 悟浄の涙で曇った目で、見えたか見えなかったか…。 そこら辺の真実は、悟浄の名誉の為に。 伏せておいてあげる事に、致しましょう。 2002.11.01 UP |
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